Missionaries / Phil Klay

処女短編集Redploymentが素晴らしかったフィル・クレイの第二作。たいへんに期待して読んだのだが、かなり失望を覚える出来だった。

 

今作ではアフガニスタンの最前線で取材をしている女記者とか、傭兵として働いているその記者の元恋人とか、コロンビアの政府軍で働いている軍人、民兵組織の一員で過酷な過去を持つ青年などさまざまな視点から、戦争というものの総体をとらえようという試みがなされている。前半ではそうした人物たちのひとりひとりのエピソードが語られ、後半になるとかれらがコロンビアに集結し、そこである事件に巻き込まれていくという物語だ。

 

試みは面白いし、力のある作家なのでそれぞれの人物たちも魅力的である。ただこの書き方がフィル・クレイの持つ特性にフィットしているのかという問題を感じざるをえなかった。Redeploymentの素晴らしさは、言ってみれば既存の文脈に回収できないような、内側で爆発して散乱する心をページに叩きつけたような、内奥の混沌を読者の前に差し出したことにあった。しかし今作はプロットベースなので、人物たちの心というよりは物語を語ることに重点が置かれている。また、心理描写においても多くの場合前作のような迫力はなく、まるでドン・デリーロの小説を読んでいるかのような感覚に陥ることも多い。そんな中でアメリカ軍人のメイソンの描写だけは傑出しており、やはりこうした人物を丹念に描くことこそがこの作家の得意分野なのではないだろうか。

 

中南米アメリカ人の関わりに物語を集中させ、そこに勧善懲悪ではあるもののそれだけではない要素を盛り込んだという意味では、エミリー・ブラント主演の『ボーダーライン』を思わせる。全体として映画の脚本のように見えてしまった。